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2023.04.24

⼯業製品に⽋かせない銅の特徴と種類②「銅合⾦」編

⼯業製品に⽋かせない銅の特徴と種類②「銅合⾦」編イメージ|共和電機工業
「KYOWAの⾦属加⼯ジャーナル」へ、ようこそ!

私たちは、銅加⼯・⾦属加⼯で約100年の歴史をもつ共和電機⼯業です。

「KYOWAの⾦属加⼯ジャーナル」と題したこのコーナーでは、銅をはじめ⼯業製品に⽤いられる各種の⾦属材料や加⼯法について、また⾦属加⼯の図⾯の基礎知識などもお伝えしていきます。

前回は、⼯業⽤材料の銅の中でも純度の⾼い「純銅」について解説しました。
前回記事はこちら
今回取り上げるのは、銅にさまざまな⾦属を加えた「銅合⾦」です。

弊社で加⼯実績の多い銅合⾦について、それぞれの特徴を紹介します。

純銅の弱点を補う「銅合⾦」

「銅合⾦」とは、銅(Cu)を主原料として他の⾦属元素を添加した合⾦の総称です。

銅は、他の⾦属材料と⽐べて圧倒的に⾼い導電率と熱伝導率を有しますが
・熱伝導率は⾼いが熱に弱い
・柔らかく加⼯しやすいが剛性や硬度は劣る
といった、主に機械的性質における弱点があります。

銅の優れた性質をある程度保持し、銅の弱点を補うために他の金属を組み合わせたものが銅合金であり、純銅よりも幅広い用途に対応します。

銅合金のうち、銅の比率が高いものを「高銅合金」といいます。
銅の比率が高いため銅本来の導電率や熱電導率を大きく損なうことなく、強度や耐熱性を高めている点が特徴です。

また高銅合金の他に、導電率が良いクロムなどの金属を加えることで、高い導電率と強度を兼ね備えた銅合金もあります。

以下、弊社で普段⽐較的多く加⼯している銅合⾦材料を紹介します。

リン⻘銅【C5191、C5191B】
快削リン⻘銅【C5441】

特徴:ばね特性と強度に優れる

リン青銅は銅にスズを配合した合金で、脱酸剤としてリンも添加されています。
(Cu+Sn+P)
一般的にスズ4〜10%、リン0.35%以下です。

強度面の改善に加え、特にばね特性が良好なことから電気機器用の材料として用いられます。

快削リン⻘銅は、リン⻘銅に鉛を添加して切削性を⾼めた銅合⾦です。
(Cu+Sn+P+Pb)
鉛を添加していないリン⻘銅に⽐べて耐⾷性は劣ります

【用途】電気測定器のスイッチ接点、コネクタ、リレー、カム、リード、フレーム、歯車軸、軸受、軸継手など、工業製品の素材として広く利用されています。

製作例:リン⻘銅を⽤いたキャップ▲ 製作例:リン⻘銅を⽤いたキャップ

真鍮(⻩銅)【C2801、C2700】

特徴:安価で加⼯性に優れる

銅と亜鉛の合金で、亜鉛を20%以上含むものが真鍮に分類されます。
(Cu+Zn)
黄金に近い色であることから黄銅とも呼ばれます。
亜鉛の割合が多いほど引張強さや硬度が高まりますが、割れやすくもなるため、一般的に銅60%以上で強度としなやかさのバランスを取った合金が用いられます。
ちなみに、C2801は銅60%:亜鉛40%の割合で「六四黄銅」、C2700は銅65%:亜鉛35%の割合で「65:35黄銅」と呼ばれています。

真鍮は、銅合金の中でも最も切削加工がしやすい材料です。冷間加工性は劣りますが熱間加工性に優れ、展延性、絞り加工性、メッキ性も良好です。
その上、安価であることから機械部品に限らず建築用金物、装飾品、楽器、日用品など幅広く活用されています。

【用途】電気部品のコネクター、熱交換機の部品、船舶用部品、配水用衛生管など

製作例:真鍮を⽤いたノズル▲ 製作例:真鍮を⽤いたノズル

快削⻩銅【C3604】

特徴:切削性がより良い

真鍮に鉛を添加して切削性をより⾼めた銅合⾦です。
(Cu+Zn+Pb)
⾼速旋盤加⼯にも適しています。

【⽤途】ボルト、ナット、ねじ、⻭⾞、機械部品など

製作例:快削⻩銅を⽤いた展⽰会⽤サンプル品▲ 製作例:快削⻩銅を⽤いた展⽰会⽤サンプル品

ネーバル⻩銅【C4641】

特徴:耐海⽔性に優れる

ネーバル黄銅は、真鍮に1%前後のスズを配合した銅合金です。
(Cu+Zn+Sn)
少量のスズにより、通常の真鍮よりも耐海水性に優れている点が特徴です。そのため船舶用部品などに用いられます。
強度・硬度も増しますが、展延性は低下します。

【用途】船舶用部品(C4641はロイド船級、NK船級用)、海洋構造材、シャフトなど

⾼⼒⻩銅【C6782】

特徴:特に強度・硬度が⾼い

⾼⼒⻩銅とは、真鍮に少量のマンガン、アルミニウム、鉄を添加した銅合⾦です。
(Cu+Zn+Mn+Al+Fe)
さらにニッケルを加えた合⾦もあります。
⾼⼒という名の通り強度・硬度が⾼く、耐摩耗性、耐⾷性、熱間鍛造性に優れています。

【⽤途】船舶⽤プロペラ軸、ポンプ軸、ナットや⻭⾞、軸受、軸受保持器、摺動部品など

ベリリウム銅【C1720】

特徴:銅合⾦の中で最も強度が⾼く⾼性能

ベリリウム銅は、銅の比率が高い「高銅合金」の一種です。
銅に数%のベリリウムと微量のコバルトを添加した合金で、銅合金の中で最高の強度を有します。
(Cu+Be+Co)
析出硬化(時効硬化)処理前は展延性が良く複雑な成形加工も可能で、処理後は耐疲労性、導電性、引張強さが向上します。
強い曲げ応力にも耐えるため、高性能バネ材料としても用いられます。

また銅の熱伝導性を保ちながら約600℃まで耐える耐熱性を備え、その他の銅の特徴である耐食性(錆びにくい)や非磁性(火花が出ない)も活かすことができる、まさに銅の長所を活かして短所を補う材料です。
ハイスペックなぶん価格は高く、一般的には自動車・金型・原子力・電子産業などで用いられおり、弊社ではベリリウム銅を用いた電極部品(製作例)や各種部品製作を行なっています。

【⽤途】高電流密度を必要とする各種部品、自動車や通信機器などの導電材料、防爆工具の材料、溶接機の部品、スイッチ、エンジン部品、コイルばねなど

製作例:ベリリウム銅を⽤いたコンタクト▲ 製作例:ベリリウム銅を⽤いたコンタクト

鉛青銅鋳物【CAC603C】

特徴:鋳造性が良く、軸受材料として優れる

スズ青銅に10%前後の鉛を配合した銅合金です。
(Cu+Sn+Pb)
鉛の分布状態をよくするために、少量のレアアースやミッシュメタルが添加されているものもあります。
鉛を加えることで鋳造性・切削性が良くなり、通常は鋳造して用います。
硬いδ相が析出して回転軸を支え、軟らかいα相が油回りをよくするため、衝撃を伴う高荷重下で使用される高速用軸受材料として優れています。

【用途】油圧ポンプやディーゼルエンジンの軸受やライナーなど

その他、弊社では丹銅板(C2400)、青銅(CAC403)、クロム銅(Z3234)、黄銅板(C2600)の加工実績があります。

また、配管用材料として、油圧配管用精密炭素鋼鋼管(OST-2)、配管用炭素銅管(SGP15A)の加工実績があります。

以上、今回は銅合金について解説しました。